大変便利な不動産投資

当時、大店法が施行され、Y堂は出店予定地域で地元の商業関係者らと出店を巡り連日のように話し合いをしていた。
Y堂側の担当者はSだった。 地元の商業関係者らの口から漏れるのはヽ「Y堂などスーパーが出てくると、その周辺の中小店は壊滅的な影響を受ける」という言葉ばかりだった。
Y堂側は、「小売業は地域に密着した産業だから、中小小売店とは共存共栄が可能である」という主張を繰り返した。 しかし、現実は厳しかった。

徐々に中小小売店の経営が行き詰まり、閉店に追い込まれるところが相次いだ。 Sも地元商業関係者と出店交渉をすることがあったが、Sの持論はこうだった。
大型店の出店によって中小小売店に悪影響が出るのではない、高度成長時代にもかかわらずパパママストアの経営が苦しくなるのは、生産性の低さにある。 売り上げが少なく、利益は上がらない。
従業員を雇う余裕がなくなり、家族経営を余儀なくされたり、営業時間を短くしたり、休業日を増やさざるを得なくなる。 消費者の行動様式が多様化する中で、営業時間の短かさや休業日数の多さは小売店自らが消費者を遠ざけていることになる。
中小店はメーカーや卸会社など川上、川中の支配下に置かれ、菓子店、雑貨店、化粧品店、酒販店、米穀店、金物店などは、どれも川上、川中が作った流通系列の販売拠点そのものだった。 例えば、ビールはビール会社の特約卸店に商品が渡り、その特約卸と契約している酒販店に商品が供給された。
スーパーが多種多様な商品を幅広いメーカーから卸会社経由で仕入れることが可能になっていたのに比べると、仕入れ先に制約のある中小小売店は消費者本位の自由な経営が難しい状況だった。 SやSは小型店でも系列を超えた品ぞろえが可能となり、消費者志向に沿った店作りが出来るなら生産性は向上すると見ていた。
そして既存の中小小売店の生産性が改善されれば大型店との共存共栄は可能になると。 これはビジネスチャンスでもあり、社会的意義も極めて大きいという考え方だ。
そうした発想がSにあったのは、Y堂入社前に出版取次会社、東京出版販売(現T)に勤め、需要予測のための統計学を学んだり、労働組合活動の際には労働生産性について勉強をしていたからだ。 中小小売店の経営についても、労働生産性の概念を持ち込んで解決の糸口を探ろうとしたのだ。

日本のSの創業の理念に「中小小売店の近代化」が掲げられているのはこのためだ。 共存共栄というからには、Y堂が中小小売店を支配するような仕組みであってはならない。

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